女性が本当のBONDEであればどのように伝えることができます
For James Bond 007 Lovers Only:洋画こそ全て
昨年度の映画賞で作品賞は勿論のこと、数々の主演・助演女優賞で受賞・ノミネートされている話題作、The Helpの原作をペーパーバックで読み、米国版ブルーレイを購入して映画も見ました。日本では3月公開ですので、日本の映画ファンは今月末のアカデミー賞の発表後に見ることができますね。1960年代のアメリカ南部の黒人家政婦と白人家庭との関係を描く原作は原作者であるキャスリン・ストケットの実体験が色濃く反映されています。黒人の家政婦を演じた二人の演技にも注目ですが、若干ユーモラスに味付けされた映画に感動した後は是非原作も手にとって欲しいと思います。ほんの半世紀前のアメリカでは信じられないような黒人差別が存在していたことに目を疑うはず。映画も原作も絶対オススメですね。
さて物語は1962年に始まります。主人公の一人、白人の美しい女性、スキーターは大学卒業後に故郷のミシシッピ州ジャクソンに帰ってきました。地元の新聞の家事お助けコーナーのゴーストライターとして新聞社に就職しますが、作家になる夢を持ち続けています。スキーターは幼い頃実家でコンスタンティンという黒人家政婦に育てられましたが、彼女はもう実家にはいませんでした。母によればシカゴの娘を訪ねるために家政婦を辞めたとのこと。スキーターは自分に手紙もくれずにコンスタンティンが実家を去るはずはないと考え、家族が何かを隠しているのではと疑い始めます。かつてコンプレックスを持ち、プロムナイトの日に男の子にダンスに誘われなくて落ち込んでいたスキーターを優しく慰めてくれたコンスタンテ ィンこそが彼女の心の拠り所でした。
afederallyチャーター銀行は何ですかスキーターは地元の同級生たちに再会します。ジャクソンの貧しい黒人女性たちは裕福な白人家庭の家政婦となって働いていましたが、心ない差別に苦しんでいました。スキーターの友人の一人、ヒリーは上院議員の息子と交際していますが、黒人が白人に異質な病原菌を伝染させると訴え、黒人と白人のトイレを分離させる法案を提出します。ヒリーの家で働いていた家政婦のミニーは嵐の夜、庭先に設置された黒人専用のトイレに行くのを拒み、家の中のトイレを使ったことで解雇されてしまいます。ミニーは翌日腹いせに『特製パイ』をヒリーに御馳走したのでした。
ミニーの親友であるエイビリーンはリーフォルト家に仕えるベテランの家政婦です。若奥様のエリザベスは子育てには無関心で可愛い一人娘の幼いメイ・モブリーの世話をエイビリーンに任せきりでした。それでも息子を亡くしているエイビリーンは仕えた家の子供を我が子のように愛情をこめて育ててきたのです。毎日素敵な言葉を教え、本を読み、オムツを換え、トイレに連れていってくれるエイビリーンのことをメイ・モブリーは『本当のお母さん』と呼んで誰よりも慕っていました。
あなたは彼らがアーティストだと考えている人を何というでしょう一方、職を失ったミニーはシーリアというちょっと変わった若妻の大邸宅で働き始めます。シーリアはグラマラスな美人ですが、家事を一切できませんでした。しかもシーリアの夫ジョニーは昔ヒリーと付き合っていました。ジョニーをたぶらかしたと信じているヒリーはシーリアを毛嫌いしていてブリッジ仲間に入れてくれません。しかしシーリアは気取った白人社会とは一線を画し、家に閉じこもりがちです。彼女は夫に内緒でミニーを雇い、家事のイロハをミニーから習います。シーリアはミニーを差別せず、同じテーブルでミニーの作る美味しい料理を堪能します。明るく振る舞うシーリアでしたが、彼女には誰にも言えない悩� ��がありました。
スキーターは家政婦たちの話を聞くうちに理不尽な世の中を変えるべく、彼女たちの面白可笑しいエピソードを本に纏めるアイディアをニューヨークの大物編集者に持ちこみます。最初は気乗りしない家政婦たちを説得し、エイビリーンやミニー、その他の家政婦仲間の切実な訴えが『The Help(家政婦)』という一冊の本になります。作者名も伏せ、登場人物も物語の舞台も架空のものにしたのですが、ひょんなことからジャクソンでの出来事であることが白人たちにバレてしまいます。窮地に陥ったスキーターの元へニューヨークの出版社から新しい仕事のオファーが届きますが、ヒリーが遂に家政婦の名前を特定して嫌がらせを始めてしまいます・・・
The Help. Movie Tie-In
著者:Kathryn Stockett
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原作を読んでから映画を見ましたが、大まかなストーリーラインは忠実に映像化していると思います。ただし、450ページ以上の長編すべてを映画化するのは不可能ですので、映画に感激した人は是非原作も読んで欲しいですね。スキーター、エイビリーン、ミニーがそれぞれの視点で1960年代の差別社会を独白し、世の中を変えてゆく希望に満ち溢れたストーリーです。黒人家政婦の告白やセリフは発音そのものが文字となっているし、文法もヘンテコ(例:"Is you one a them peoples?")ですが、かえっていい味を出していて、慣れてくると何とも独特のリズム感を醸し出すのです。文法にこだわる日本の英語学習者としてはこんな黒人家政婦が白人の幼い子に言葉を教えてよいものか?とヒヤヒヤするでしょうね。
映画で描き切ることができなかったエピソードはいくつかあります。ちょっとノーテンキなシーリアが夫に内緒でミニーに家事を手伝ってもらうところは夫も実はミニーの存在に気がついていて、あえて知らないフリをしています。心が広い二人の雇い主の狭間で揺れ動くミニーの心理も読みどころです。また、ラストシーンでは黒人に対して差別的な遊びを学校でメイ・モブリーに教えた白人の先生に対して、両親がクラス替えを学校に申し入れるエピソードもあります(個人的には映画にして 欲しかった!)。また、スキーターが大好きだった家政婦、コンスタンティンが家を去るきっかけとなった彼女の実の娘の事件も実はもっと過激です。スキーターの母親も原作ではかなり重病でしたが、映画版は元気でしたね。
原作者キャスリン・ストケットは本作の舞台となったジャクソンで生まれ育ちました。作者あとがきを読む限り、時代や家庭環境が若干異なるものの、黒人家政婦との思い出、人種差別への激しい憤り、そして故郷を誇りに思う気持ちは本作に十二分に込められている様子。スキーターと同じく、幼い頃は容姿にコンプレックスを持っていてよく家政婦に慰められていた("You a beatiful girl...")そうですが、現在は美しい一児の母ですね。本作が処女作とはとても思えませんが、ニューヨークに移り住んで出版社でキャリアを積んだところもスキーターそっくりです。
スキーターを演じたエマ・ストーンは今注目の女優さんですね。傑作ホラー・コメディの『ゾンビランド』の時とは全く違って爽やかさとひたむきさを持ち合わせた愛すべきキャラクターです。来年公開の『アメージング・スパイダーマン』のヒロイン役も楽しみですね。
エイビリーンを演じたヴィオラ・デイヴィスの存在感は抜群でしたね。社会的に地位の高い役から家政婦まで幅広い役柄をこなすことができる素晴らしい女優さんです。メイ・モブリーに接するときの優しい表情が忘れられません。
嫌味でヒステリックな悪役ヒリーを演� �たブライス・ダラス・ハワードのブチキレ演技も強烈な印象。1960年代ファッションがばっちり似合っていました。ちょっと巻き舌っぽい喋り方は1960年代風なのか、ミシシッピ風の発音なのか、ネイティブに聞いてみたいところ。
このように主演クラスの女優さんたちの演技は全て印象的でしたが、ズバリ一番はミニー役のオクタヴィア・スペンサーでしょう。クリクリとした大きな目にでっぷりとした体格、気性の激しい性格ながらユーモアのセンスも抜群、そして誰よりも美味しいパイを作る原作のミニーを見事に体現していました。既に助演女優賞を総ナメにしている感がありますが、個人的にはアカデミー賞も間違いないと思います。当たるかな?
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