2012年5月1日火曜日

『*[病気]』の検索結果 - 関内関外日記


「*[病気]」の検索結果を表示しています

2012-03-27

映画『精神』を軽く病んでいる俺が見るのこと

  • no title

精神 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2010/07/24
  • メディア: DVD
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●想田和弘の「観察映画」、『精神』をみた。『選挙』は何年か前にみていて、精神病院を扱った映画を撮っているという話題も目にしてたと思う。が、すっかり忘れていたのだった。

●昨年末くらいから精神病院のお世話になる中で、ふと思いだしたのだ。

●希死念慮が完全に頭を支配しきった末に、朝、身体が動かなくなった。いくつか医者に電話をかけるも一週間待ちなどという中、偶然一軒だけその日の予約がとれた。その時は、「精神病院」(心療内科? メンタルヘルスクリニック?)がどんなものかなどと考える余裕はなかった。

●でも、俺は精神の病気でいえば、相当に軽い方ではあると思う。処方される薬の種類や量から判断するにだ。そしてもう、それら薬によって身体が動く限りは戦場に戻って死ぬまで働く。本来なら休養で済む程度の症状にも投薬するのはよろしくない、などというのはブルジョワの戯言だ。

●まあ、そんな俺が『精神』をみた。出てくるクリニックはなんというか、民家そのもののようであって、待合室なども畳の部屋だったりして、患者同士が寝っ転がったり、ダベったりしてる。喫煙完全自由という、少なくとも今現在の神奈川県ではアウトでアバウトな空気。

●少なくとも俺の知っている医者は普通の内科のような作りで、待合室も普通の内科のようである。ただ、診察室のドアが薄いせいと、医者の声がデカイので、かなり内容が聞こえてきちゃってる点はオープンなのだが。まあ、そういう意味でなくオープンなのが『精神』の病院だ。

●というわけで、たぶん、俺が想像するに、『精神』の精神科としてはけっこう特殊なのではないかという印象を受ける。が、かといってなにかしらホメオパシーとか特殊な療法を取り入れてるとか、神憑りとかではない。普通に薬も出す。ただ、その世界で有名な先生なのかどうかしらんが、ガンダムかジムかで言えばガンダムなんだろうな、という、そういう老医師の病院なのだ。

●しかし、主役はといえば、やはり患者だろう。これも、本人たちが話し合い、出たい人は出る、ということになったという。だからといって、顔出しオーケーのような軽い人たちが出てくるわけではない。すげえヘビーで、長く長くたたかってきた人たちであって、語られる内容の重さも、正直想像できんレベルのものであった。

●また、やはり自分の精神、心、内面、一方で、その己が属する社会を長年見てきた人たちでもあって、中にはえらく含蓄というか、すげえところまで行ってるな、というような、そんな印象を受ける人もいる。

●まあ、いろいろなのだし、いろいろの人を素直に映しているわけだし。そう、一人ひとりの語りを存分に、ぶった切らずにやってくれているあたりはいい。また、人間関係やなんやらみたいなのもまったくといっていいほど描かないし、その時々を切り取ってみせてくれるようであって、変に話の流れのないのもいい。こういうのも悪くない。

●そういうわけで、ラストもここでか! というところで終わる。おっさんがバイクに乗る。走り去る。あれ、さっき免許なんて持ってないみたいなこと言ってなかったっけ? とか思う。思ったらラストだ。が、そのスタッフロールの冒頭に衝撃を受けずにはおられん。

●って、ネットで探せば監督の口からも語られていることなので言ってしまえば、出演していた三人の方が亡くなっており、追悼の文字とともに顔写真が出るのだ。

●とくに一人の方にはびっくりした。完治するたぐいの病気なのかどうかわからないが、少なくともわりと悪くないところにいるように見えたからだ。

●やっぱり人間が何十年と生きてきて作られてしまったパーソナリティーというやつは、生半可に変えられたりするようなものではないのだろう。薬などいまの時点で対処療法でしかない。そういう意味では、俺も「幼稚園時代は闊達だった」とかいう記憶はいっさいなく、わりと物心ついたころから不安に圧倒されていたのだから、そういう意味では年季が入っているともいえるか。

●それでもやはり俺は人間同士のつながりとか、社会のありようの変化とか、そういったものを信じようとは思わない。メンヘルはもっと徹底的に、若いうちにその傾向を見抜き、早めに投薬や認知療法を施すべきであるし、こじらせてしまった人間には脳深部刺激療法でも精密なロボトミーでもなんでもいいから、徹底的に人格を破壊し、改善できるよう、医療の進歩に期待するばかりである。

●まあ、むなしい期待か。何事においても半端者の俺には健常者側にも居場所がなければ、向こう側というものがあるとしたところで、そこに入るほどのこと悪くもない。なにが悪いって運が悪いし、性質が悪い。なにか大きく欠落していて、そのわりには下手に適応できる部分がある。本音を言えば、わりと頭は切れるような気もするが、心の方も切れっぱなしで、もう電池も切れ始めている。貴族様でもあるまい、人生の充電などする余裕もない。くそ、俺にひたすら自由な時間を与えてくれ。ろくでもないことでその時間を満たしてやろう。

●いくら薬を飲んだところで、ずっと抱きつづけていた恐怖と不安は消えやしないし、希死念慮はポケットの中に。あとはせめてそれの扱い方くらいか。迷惑をかけないように死ぬか、迷惑をかけて死ぬか、ちょっとは役に立って死ぬか。まあ、いずれ人間は死ぬしな。

●そういう意味で、こんな日記すらプリントアウト系の薄っぺらい人間の精神一枚分の記録ではあって、どんなエンドがあるのか、まあ物好きは観察すればよろしい。

2012-03-06

人生の素晴らしさ、生きる尊さ、自分の大切さ

  • 【法廷から】「更生に何のメリットあるの? ばからしい」 "無反省"ライブハウス襲撃犯が語った「法相殺害計画」と「葛藤」+(1/5ページ) - MSN産経ニュース

「まっとうに、前向きに生きる自信があった」と、順調に更生の道のりを歩んでいた被告。しかし、仕事を始めて数カ月がたつと、歯車が狂い始める。

 「重機の操作とか、責任重大な仕事を任されるようになり、ついていけなくなった。普段は来ないような大きさの粗大ごみが持ち込まれると、対処方法が分からず訳の分からない行動をとってしまった」

 被告は今回の事件で逮捕された後、精神鑑定で「アスペルガー障害」と診断された。発達障害の1つで、著しい言葉の遅れや知的障害は見られないが、興味・関心が極端に狭かったり、規則的でない作業を苦手とする特徴がある。

 だが、当時は周囲も被告自身も、アスペルガーの認識はない。父親に相談すると「自分も口べただったが、今では(営業職で)トップセールスになった。お前は病気なんかじゃない」と叱咤(しった)激励され、さらに孤独を深めたという。

特に興味をひかれたのは、大阪・池田小や東京・秋葉原の無差別殺傷事件だったという。


 「大勢を殺して死刑になりたい。投げやりな動機に共感した。彼らの絶望、孤立、えん世観を理解できた」

弁護人「今回の事件で、無期懲役や死刑はない。社会に復帰した後はどうしますか」

被告「全く考えていない。更生してまじめに生きて、何のメリットがあるんだ。ばからしい」

弁護人「なぜ更生意欲がない?」

被告「自分は社会で生きる価値がないクズだから。生まれたのが間違いだったと思っている」

「少年院時代に感じた人生の素晴らしさ、生きる尊さ、自分の大切さ。すべて、幻を見せられただけだった。社会は閉鎖的でシビアで、冷たく退屈だった」

 まったく、俺のようなやつだと思うし、まったく、俺とこいつで何が違うのかわからない。違いがあるとすれば、やったか、やらないか、ただそれだけのようにしか思えない。俺が三十過ぎて自殺もしていなければ、凶行に走っていないのも、たまたまに過ぎない。

 俺はこいつが酒鬼薔薇聖斗や宅間や加藤を「理解できた」という感情を「理解」できる。むろん、その三人もそれぞれまったくべつのやつで、まったくそれぞれの人生と身体があり、パーソナリティーがあって、それぞれまったくべつのことをやったに過ぎない。そもそもそんな目立ったことをしないやつような、そこらへんの人間を「理解」するなんてことすらできるのか。それでも、俺は、こいつが、あいつらを「理解できた」と思うところに共感できる。

 そうか、共感はできるのかもしれない。共感とはそんなものだ。「共に」などと書くが、おおよそ一方的な感情として用いられて、とくだんおかしく思われることもない。もっとも、被害者の苦しみにまったく共感できない点については、完全にキチガイ扱いだろう。それはまったく正しい。

 そりゃあ、俺とこいつとでは違う。生まれた時点でのある種の富のようなもので俺が恵まれていたのかもしれない。そのおかげで、一手先延ばしして逃げる余地があったのかもしれない(次があるかはわからない。おそらくない)。なんらかのディスオーダーという面で、俺のほうがそうとうに軽いのかもしれない。適応力という点で、俺のほうがこずるく立ちまわることができたのかもしれない。行動力という点で、明らかに俺が劣っていたのかもしれない。ただ、そんな差が俺とこいつを隔てる絶対的な差なんてものにはなりえない。面倒くさいからやらないが、俺の日記の過去ログから、この記事のこいつの証言のおおよそは再構成できるんじゃないのか。やったか、やらないかを除けば。

(一応言っておくが、発達障害者全般がとくべつに高い犯罪率があるかどうか知らない。パーソナリティー障害なんかについていえば、犯罪を犯したやつが反社会的パーソナリティーディスオーダーということになるのかもしれないし、このあたり、あまり理解できていないが。あくまで、俺とこいつと、あとはあいつらの話だ)

 こいつがこのまま累犯障害者になるのかどうかわからない。社会復帰後に就いた職場がちょっと違っただけで、こいつはわりとうまい居場所を見つけられた可能性もあった。十分にそう読める。日本の少年院、幻を見せられるなんてわりとよくやってるじゃないか。俺は幻なんて見たことがない。物心ついたころからずっと不安と心配と恐怖ばかりで、人生の素晴らしさ、生きる尊さ、自分の大切さなんて感じたことがない。

 いや、少年院はよくやれていないから、こういう結果になってしまったのか。なにせ、あけすけに言えば脳の欠陥なんだ。少年院になにができる。なんというか、どうしようもないんだ。俺も三十超えてようやく医者にかかってなにかしらそういうことで生きづらく、社会に適応しがたいこと、重機を操作するよりは向いている仕事にありつきながら、いよいよ限界がきて、薬食ってなんとか生きている。なんの蓄えもなく、ねんきん特別便は早く死ねと通告してくる。お前に言われんでもわかってる。でも怖いんだよ。俺は臆病者だから。

 俺が俺の持っている圧倒的な自己否定感、自分は社会で生きる価値がないクズ感を、なんらかの脳の中の欠如がもたらした二次障害だと客観視したところで、それがなんになるのだろうか。なんにもならない。昨日はたまたまついていただけ。明日はどうなるかわからない。ささやかな居場所が続く保証はなく、それが失われたら、待っているのは圧倒的に閉鎖的でシビアな世界だ。薬を何錠も飲んで、朝起きてなぜか何回も部屋の中で転んで、ようやく外に出られる人間、睡眠時無呼吸症候群持ちで、とても車の運転なんかできない人間、高卒で非力の人間、他人とのコミュニケーションが異常な負荷になる人間、これが簡単に居場所を見つけれるほど今の社会は甘くない。経済も脳のいじる技術も十分ではない。

 おまけに、俺も、こいつも、そんなに頭悪くなさそうに見える可能性があって、同情を受けにくい。俺もお白州で同じようなこと口にして、心ある人、大切な家族のある人に、「こんな非人間的な獣は永久に隔離しておけ」とか言われるのだろう。また、山本譲司が世話してきたような知的障害者たちは、そんな言葉を吐くこともなく、また報道されることもなく、向こうに行ってしまうのだろう。

 今日の夕方、近くの印刷屋の営業のおっさんが来て、3月1日に出社してみたら会社が倒産していた、という話をして帰った。帰り道、なんの店か横浜に引っ越してきてからずっと疑問だった店が閉店していた。みんなどこへ行ってしまうのだろうか? いくらパセティックに振る舞っても振る舞いで済まされない。多くは望まない。欠陥品や敗残者にささやかな居場所を。あるいは、完全に脳を破壊して、作り替えてしまう薬を。それが無理なら、せめて刑務所で幻を見たい。一度でいいから、人生の素晴らしさ、生きる尊さ、自分の大切さを感じてみたい。

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2012-02-17

「うつ」誘発、たんぱく質? エピジェネティクスってなんぞね?

 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所(春日井市)は、体内のたんぱく質の一種に、恐怖や不安の増幅、ストレスによる活動低下など、うつ症状を誘発する働きがあることを突き止めた。

お知らせ : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 とかいう記事を読んで、軽度であるかもしらんが抗うつ剤とか食べてる人間として気になったりもしたりして。でも、「HDAC6(ヒストン脱アセチル化酵素6)」、つーか、タンパク質? あんまり最近よんだ脳内のあれの話に出てくる単語って感じじゃねえな、などと。

 HDAC6の働きを阻害する化合物(HDAC6阻害剤:NCT-14b)を正常マウスに投与したところ、抗うつ様行動が観察されました。また既製の抗うつ薬に対する応答は、HDAC6遺伝子欠損マウスにおいても正常マウスと変わりませんでした。これらのことから、HDAC6阻害剤の作用メカニズムは、既製の抗うつ薬と重複しないと推測されます。

情動のコントロールに影響を及ぼすタンパク質の働きを発見 ?うつ病の病態解明・新規抗うつ薬の開発につながる成果? | 愛知県

 愛知県の記者発表はこちら。さて、セロトニンにどうこうって話もある。タンパク質? ようわからん。で、HDACとかで検索してみる。


  • wikipedia:ヒストン脱アセチル化酵素

遺伝子の発現は遺伝子の塩基配列によるもの以外にDNAあるいはヒストンに対する後付けの修飾により制御される場合がある(エピジェネティックな制御)。ヒストンはDNAが巻きついているコアヒストン(H2A、H2B、H3、H4)とDNAのリンカー部分に結合しているリンカーヒストン(H1)に大別される。コアヒストンのアセチル化はエピジェネティックな遺伝子の制御において重要な役割を担っている

 エピジェネティックな遺伝子の制御?(←だいたい小学校で理科に落ちこぼれた人間はこのくらいしか読めない) エピジェネティックってなんだ? 検索、検索。

  • Science&Technology Trends

 この記事を読んだ感想としては、「猫の写真がかわいい」ということであるが、「エピジェネティクス研究で何がわかるのか?」という、非理系の「で、何の役に立つの?」用の項目があって、「精神疾患の発症や行動異常との関連性」とか言ってるから、今回の記事のあれはこれだろうと推測してみたりして。

 ほんで、どちらかというと癌の方なんかで注目されていたりするようで、「エピゲノム創薬」注目やで、という話である。このあたりの、一般向けの「エピジェネティクスとは」あたりは、なんとなくわかりやすく書かれていて助かる。正確性はしらんが、新聞記事よりは量が多い。

エピジェネティクスの基礎研究は日本でも活発化しており、論文数では日本は世界の上位に位置する。これらの研究成果を活用した、日本発のエピジェネティック薬の創出に期待したい。

 とあるので、今回の記事はその期待に応えるものなのかどうか。

 神経可塑性には脳における遺伝子発現の制御機構が重要な役割をはたしている.とくにうつ病に関してはBDNF(brain-derived neurotrophic factor,脳由来神経栄養因子)の関与が強く示唆されており,ストレスの負荷によってBDNFの発現量が低下し,抗うつ薬の投与によってその発現が回復するといった報告がある1).さらに最近,DNAの塩基配列に依存しないエピジェネティックな遺伝子発現の調節機構と気分障害との関連が着目されている.

GDNFをコードする遺伝子のエピジェネティックな制御がストレスへの適応と不適応を決定する : ライフサイエンス 新着論文レビュー

 そんでほかに、こんなん出てきて、BDNF? とかまた新しい敵が出てきて困るが、なんか関係ありそうな気はする。まあともかく、気分障害みたいなもんは、遺伝子だけが決めてるんじゃねえし、その調節機構みたいなもんに手を入れれば治療になるだろう、みたいなことだろうか。

「我々は今までゲノムを解き明かせば全てが分かる」と思っていたと1990年代にエピジェネティックの可能性を説いたロックフェラー大学のデイビッド・アリスは言う。「しかし、いざヒトゲノムが解き明かされると、ゲノムは入り口でしかなくこれから先に大変な難問が控えていた」とアリス氏は言う。

エピジェネティックスとは分子生物学を考える上での基本的方向転換である。DNAは確かに生物を作る基本骨格であるが、DNAの情報はDNAの上を覆う化学物質の層にコントロールされているのが次第に明らかになった。

このDNA台本の修正はエピミュテーションと呼ばれていて、遺伝子のスイッチを不自然に入れたり切ったりする。別の言葉で言い換えると、DNAと言う生命の台本が重要なのではなくて、その台本を包む包装が重要であるという、生物学的、遺伝学の革命的思考だ。

生物学を変えるエピジェネティックス

 で、Newsweekの記事なんかが見つかって、たいへんわかりやすい。で、最後にこんなことが。

メンデルの法則に逆らう所か、ダーウィンの進化論まで揺るがすことになる

 ようわからんが、そうなの?

  • エピジェネティクス進化論

 そうしたらエピジェネティクス進化論というような言葉が見つかったりして。

  • wikipedia:ネオ・ラマルキズム

 「獲得形質の遺伝は認められない」という「セントラルドグマ」の考え方の過大視に対して、細胞レベルでの「遺伝子の後天的修飾」研究が行われていると。

このような研究は「エピジェネティックス」と呼ばれており、各国で盛んに研究が行われており、後天的修飾の起きる範囲は一体どの程度なのか(どの程度にとどまるのか)、その仕組みはどうなっているのか、といったことが日々解き明かされようとしてはいる。

 などという。

 というわけで、理科のことはよくわからん(古舘がベンゼン環知らないのを馬鹿にしてた連中を<censored>したくなるレベル)からなんともわからんが、文系脳の恐怖的にはこんなふうに記事を読み、情報を辿りましたと。まあ、つまり、なんというか、根本的な機序や仕組み、言及されているものの大きさ、そんなものまったく分からず、言葉を追っかけただけ、というような。比喩や類推、連想、そういうレベルであって、これはわりかし古代人が薬草を使い始めたきっかけに似ているかもしれないし、これを100万倍くらい高度にしたらソーカル事件的なものになるのかなとか思った。おしまい。

2012-02-10

神経伝達物質から金を取るのは許されるのか?

10万も20万も支払ってる人は、もはや「面白さ」ではなく「錯誤」や「射幸性」にお金を払っています。

モバイルSNSゲームが儲かる本当の理由。かーずSPはなぜ15万もつぎ込んだのか? - Togetter

 おれはいま、抗うつ剤であるとかロングやショートの抗不安剤であるとか睡眠導入剤まみれで生活していて、わりと脳内の伝達物質とかのことに興味がある。理系落ちこぼれのくせ、前から興味がないわけではなかったが。

 それで、ちょっと前、なにか適当に検索をかけてPDFの論文とか見ていて、こんなのを見つけた。

 「遅延報酬選択における衝動性と抑うつ傾向」という論文である。書いてあることの9割5分くらいはわからない。正しい実験のやり方なのか、正しいデータなのか、正しいことが書いてあるかどうかもわからない。ただ、なんとなく「脳内のセロトニン具合のよろしくない抑うつ的なやつは、長期的に得る大きな報酬より目先の少なめの報酬に飛びつきやすいんじゃねえの?」というようなテーマの話だろうとは思った。

 まあ、これの個別的な内容はいいんだけれども、どんどん人間の脳内の神経伝達物質やらなにやらの働きが解明されていって、人が博打やモバマスにはまりこんでいく機序みたいもんが明らかにされていくんじゃないだろうか。

 それで、そうなったとき、なんというのだろうか、そこのところに明らかに働きかけて、それで商売したり、政治したりするのは、オーケーなのか、アウトなのか。

  • wikipedia:サブリミナル効果

 サブリミナル効果とか、その効果自体への疑問符はあるみたいだけど、まあ、人間の無意識に働きかけるのはアウトだよ、ということになっている。それじゃあ、依存性を生じさせるコンプガチャ? とかそういうもんはどうなんだ、と。あるいは、パチンコ、パチスロ、三競オート。

 って、これは他人事じゃない。いや、、いちおう俺は競馬をやめているので「他人事じゃなかった」と書かせてもらうが、やはり勝ち逃げの難しさや、負け続けの日の最終レースのときの自分が自分が自分でない感じ、については知っているつもりだ。もともと俺は成功体験を受容する性能が著しく低いようで、馬券が当たっても、ほんの一瞬の快感の次に「もっと買っておけばよかった」、「買い目はもっと絞れた」と後悔の方が大量におそってくるタイプで、石橋脩を叩いてガルボを買わないようなやつなんだけど、カーッとなって、なにか突っ込んでしまう瞬間というのはある。


 ただ、俺はお馬で人生アウトになっていないし、少なくない競馬人間がいて、そこまで大勢の人間がアウトになっていないから、合法的に競馬が行われている。このあたりは、社会の損失とのバランスのみで語られるところだろう。

 もっと端的にいえば、脳に直接効くドラッグであるアルコールが許されている。もちろん、禁酒法みたいな発想もあって、結局のところ綱引きや落としどころ、そういう話になる。その都度、社会にとってのメリット・デメリットを勘案して決めていきましょう。その中には、たとえば造酒業界やタバコ産業の経済への貢献みたいな話だって入ってくる。ナチス政権下ドイツですらそうだった。

 じゃあ、そういうところで。……なんだけれども、なんだろうか、どんどん人間の脳の中の機序がわかっていくにつれて、それじゃあ自由意思とか個人の自由、個人とはなんなんだろう、みたいなところをもうちょっと突き詰めなくていいのか、という気もするのである。刑法上の心身喪失とかに近いところもあるかもしれんが、脳内の化学伝達物質の、本人の意思ではどうしようもない側面を含めて人格か。というか、その意思というものは……と、それはもう哲学とかの領域になるのだろうか。

 わからんが、なんかそのあたりがどうもひっかかる。むろん、全人類のすべての脳がリアルタイムでモニタリングされるとか、脳内の精密検査でそいつのあらゆる傾向が決められるとか、ディストピア的SFの世界は望まない。望まないが、子供の時点で将来的に不幸な方向に行く確率のえらく高いやつとかを判別できるのならば、判別しておくべきという気もする。サブリミナル効果(があるとして)のように無意識を操られるのも面白くないが、芸術や広告、表現全般で人に揺さぶりをかけるような創意や工夫が、その効用ゆえに否定されてもつまらない。パターナリズムや優生学(って、なんか自らに関して非常に思うところはあるのだけれど)に陥らず、さりとて脳の中身への侵入を自由にさせず。

 畢竟ずるに、人間とはなにかというところの大いなる問いに接近せざるをえないのだろうし、科学というものがいろいろ明かしていくにつれてまた新たなあいまいさが生まれ、問いも増えていく。それこそが進歩といえばそうなのだろうし、とくにその速度が加速度的な今に生きる以上、つねに革命的警戒心を絶やしてはならない。だから俺は、思わず新曲を買ってしまう、追加衣裳を買ってしまう衝動を抑えて、アイマス2の電源を入れない。でもやりたい。まったく、めんどうなことだ。

2012-01-19

我が内なる健康帝国〜『健康帝国ナチス』を読んで〜

健康帝国ナチス

  • 作者: ロバート・N.プロクター,Robert N. Proctor,宮崎尊
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2003/09
  • メディア: 単行本
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 横浜市中央図書館にて借りたものを読んだ。ちなみに、図書館で本を借りたのは生まれてはじめてだと昨日書いたとおりだ。そして、俺がいちいち本の感想で「ブックオフで買った」などと書くのは、よほど古い本でも無い限り、それを恥じているからである。さらには、無料で借りて読んだ(間接的に税金で買っている、などという実感などあるはずもない)というのは、自分の中ではおおよそ窃盗を告白するくらいの気持ちであることを申し沿えておく。頭のおかしい人間の言うことなので海容願いたい。

 さて、精神医学系の棚の中で装幀がひときわ目立っていたから手に取った本である。けっこう話題になっていたものと思う。「目立ったから手に取った」というのもあるが、このところ自分の脳の傾向やその背景にある血統などから、相当に優生思想的な想念に取り憑かれていて、そのあたりについてなんかあるかと思ったのである。

 が、まあそのあたりは主題ではない。原題は『THE NAZI WAR ON CANCER』であって、かに座のプレセペ星団からやってきた謎のカニ光線軍団を宇宙戦用メッサーシュミットを駆るルフトバッフェが迎え撃つサイエンス・フィクション・ダブル・フィーチャーである。Doctor X will build a creature。

 というわけで、主にガン予防をめぐるナチス政権下ドイツでの、医師や科学者と政治とのいろいろの話である。「タバコ規制は健康ファッショだ」というような本ではない、と著者は序文で五寸釘ぶっ刺しているし、もちろん「ナチスにも良い所があったんだよ」という賞賛本でもないと刺している。ナチスを扱うには革命的警戒心が必要なのである。その警戒心が、あるいはその警戒心を利用して、当時のドイツの研究者が立証していたタバコと肺がんの関係性なんかについて、アメリカその他の国が適切に対応できてねえんじゃないか、みたいな話もある。

 ナチス政権下のガン研究およびガン政策に関する事実が、歴史家たちに見落とされてきたのにはさまざまな理由があるが、最大の理由はおそらく、それがあえて発掘するようなことではないと考えられたことだろう。いわりゅる「イデオロギーの隙間」に落ちたのである。一九八〇年代以前、家庭内のラドンがまったく顧みられなかったのも同様で、たまたまそのテーマに目を向けるきっかけがないのである。ともかく歴史的な記憶というものは選択的なもので、我々はともすればその時代の蛮行に目を向けがちである。そうすれば、神聖なる「我々」と堕ちた「奴ら」のあいだにきれいに線を引くことができるからである。

P.293-294

 そんな「線」なんて引けるものかよ、というのが筆者の主張といっていいだろう。そのために、ナチス政権下でのガン政策について当時の論文を引用したりしつつ、丹念に歴史を振り返っているという印象。すなわち、独裁政権に抑圧された科学者が権力者に阿った似非科学を喧伝したとか、逆に科学者が権力の威を借りてやりたい放題に非人道的な研究をやったとか、そういう面は大いにあるにせよ、おおよそそれだけじゃ言い切れねえのが人間社会だろう、みたいな。

 なんつうのか、やはりナチスとて一枚岩でなく、総統閣下が菜食主義者的で酒もタバコもやらんといっても、ゲーリング元帥はぜんぜんちげえし、高級幹部たちもバラバラなのだし、それぞれの縄張りみたいなの持ってたりするし(北朝鮮の今とかどうなんだろ)、また、現場方面でも、たとえば健全で健康な人種を! という目的のもと、X線検査をバンバンやるべき派と、ガンの原因になるから控えよう派がいたりとか。あと、タバコについても、現代なみの広告規制とかやって撲滅させようとする一方で、税収にもなるとかいう利権の話とかあったり(突撃隊が自らのブランドのタバコ売って資金稼ぎしたりしてんのな)、健康志向も職業病管理も医療費削減目的が大きかったり、まあなんというのだろうか、正直って「線」ひ けねえわ、みたいな気持ちにもなる。今の日本にだって、極端な話、健康志向の埒外にある劣等人種扱いの人間だっているだろう。あとは、放射線のあたりとか、この今の状況ではね。あとは、ホメオパシーだの食事療法だの、そのあたりとかもさ。つーか、こないだ「コーヒー浣腸かよ!」ってびっくりした療法のマックス・ゲルソンの名前が、ナチスに追放された自然療法派が一箇所だけ出てきて奇妙な縁を感じた。やはりやるしかないのか。


 それはそうと、ともかく一筋縄ではいかねえよと。例として出ていた話の一つで、なんかすげえこんがらがるなって思ったエピソードが、最終章で紹介されてた。当時の科学水準からしても迷信的な「自然回帰派」(ガン菌説)の医師ブレーマーを国際学会のドイツ代表に参加させるかどうかって話になって、医学的にはスタンダードな他の医師たちが「ドイツの恥になるから外そう」って言って、総統閣下にまで働きかけて外すわけ。この話を、その似非医学信奉者たちは、「正当な治療が権力によって不当に踏みにじられた。現在この療法を非難するのはナチの医師たちと同じだ」と主張に利用したりする。そりゃ確かに、他の医師たちは熱心なナチ党員の権力者だったりする(そうでないのもいる)。

 が、一方で、その「自然回帰派」の医師ブレーマーも権力者であるユリウス・シュトライヒャーという大きな後ろ盾があって、研究所とかも与えられたりしてる。そこで、逆の見方をすると、医学的に正しい意見をナチスに抵抗して退けた、ともなる。

 もちろん、どっちも見たいところしか見ていない。なんつーのか、もちろん、普遍的に許されざる罪みてえのはあるし、目を背けちゃいけないけど、複雑にからみ合って、ぐちゃぐちゃなもんから目を逸して単純化してっとよくねえよって、そういう話だよね、うん。

 だからこう、タバコについても、あるいは環境問題についても(これもわりかし当時のドイツは先駆的な面もあった)、「ナチがやってたから絶対反対」とか、そういう単純化みてえのは危ないだろうみたいな。

反ユダヤ主義はナチスのイデオロギーの中核ではあったが、大衆がナチスの大義に惹かれたのはそれだけの理由だけではない、というか、それが最大の理由ではなかった。大衆はナチズムに、その健康志向をはじめとするさまざまな分野に、若さの回復を見たのである。ナチズムに大手術と徹底した浄化を望んだのである。しかもそれは必ずしも忌まわしい方向だけではなかった。これはべつに、戦後半世紀もたったから言える、ということではないと思う。

 まあなんだ、なんか旅順とは関係ない閉塞感に苛まれている現代日本の話が思い浮かんだりもするだろうか。あるいはまた、しかし俺は俺の内なる健康志向みたいなものと、このナチスの健康志向を重ねたりもする。

  • 資本主義ってデブなの? 死ぬの? - 関内関外日記

  ……って、すでに自分で「ナチスの健康思想かよ」とか言ってるじゃん。まあそういうことだ。俺はダイエットをやめた今でも朝はミューズリー(これの開発者の名前も本に出てきた)にプロテインかけて食ってるし、炭水化物敵視というか、白米敵視みたいなものはわりと存続してる。

  • 反米主義宣言 - 関内関外日記

 まあ、なんだろうね。ただ、ひとつ言っておきたいのは、俺のこの偏った健康食志向みたいなものは、俺が勝手に感じるままにやってることであって、誰かの主張を参考にしたりだとか、そういう学説の本を読んだりとか、一切していないのである。そして、俺は強迫性障害的な性格の持ち主であって、やはりなにか通じるところがあるのかね、人間個体も社会も、などと。

 とはいえ、やはりこういう俺の中にもデブのゲーリングや神秘家のヘスもいるし、それを小馬鹿にして、禁煙家の総統を讃えつつ家の中ではタバコを吸うゲッベルスだっているわけである(なんか例が悪いな)。そこのところの多面性が大切なのだ(やっぱり例が悪いから説得力ねえや)。

 まあ、これ読んでて思い浮かんだのは、唯と澪(ただとみお、って打ったらGoogle日本語がこう変換したんだぜ!)、多田富雄の『生命の意味論』かな。人間も社会も自己目的化していく超システムであって、ガンが悪いからって臓器ごとぶった切ったら死ぬぜとか、そんなこと言ってたあたり。

多様性と冗長性は超システムの危機対応のための基本的な属性であるのだから、合理性だけでいたずらに切り詰めることは危険でさえある。

 まあ、そんなもんだろ、たぶん。

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ゲッベルス―メディア時代の政治宣伝 (中公新書)

  • 作者: 平井正
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1991/06
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 中学のころ、ナチ関係で初めて読んだ本これかな? 

生命の意味論

  • 作者: 多田富雄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1997/02
  • メディア: 単行本
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 多田富雄さんの本はもっと読まないと。……借りるか?

キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: マイクレズニック,Mike Resnick,内田昌之
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1999/05
  • メディア: 文庫
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 あんまり関係ないけど、ナチスの徹底した「自然保護」の考え方として、「未開人」を徹底して文明から切り離し、干渉も観光も禁止、そのままにしておく、みたいなのが紹介されてて、即座にこれを思い出した。

臨床局所解剖学アトラス (第1巻)

  • 作者: ペルンコップ,佐藤達夫
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 1995/06
  • メディア: 単行本
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 この本は人体解剖図の世界的スタンダードだったらしいけど、モデルの標本が強制収容所の人体実験ものじゃねえかって問題になったとか。「人体の不思議展」の立体標本が中国の死刑囚だとかいう話を思いだす。

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goldhead

僕らは今の音頭取りだけが嫌いなのじゃない。今のその犬だけがいやなのじゃない。音頭取りそのもの、犬そのものがいやなんだ。……って大杉栄が言ってた。



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